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2006-10-27 21:47:43

日本人の感情
テーマ:日本の気になるもの


言わなくても分かる感情=雰囲気で察する心


心とうらはらな表現方法=本当は好きなのに、素直に言えない心


繊細な描写
心のわずかな揺れ





日本らしい映画と言えば、やはり小津さんの映画は欠かせない。
大学時代にみた、それは座敷にすわり、静かに食事をする二人。
私に衝撃をあたえた映画だった。


白黒なのに、女の人の美しさや、色気がにじんででてきていて
ほとんど台詞がない映画なのに。


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なによりも物語をかたり続けている


残念ながら、そのときみた映画のタイトルは忘れてしまったのだが、どうしても忘れられないその座敷のシーンと、ゴダールのこの映画が重なってしょうがない。






気狂いピエロ


常夏の海での二人のシーンと、


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なんだか重なってしまうのだ。



日本のあんな独特の感性がそんなところから感じとれたりする。



でね、こんな感じ。




諸 君はまたそう云う大きな建物の、奥の奥の部屋へ行くと、もう全く外の光りが届かなくなった暗がりの中にある金襖や金屏風が、幾間を隔てた遠い遠い庭の明り の穂先を捉えて、ぼうっと夢のように照り返しているのを見たことはないか。
その照り返しは、夕暮れの地平線のように、あたりの闇へ実に弱々しい金色の明り を投げているのであるが、私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う。



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そ れだから、これは私一人だけの感じであるかも知れないが、およそ日本人の皮膚に能衣裳ほど映りのいゝものはないと思う。

云うまでもなくあの衣裳には随分絢 爛なものが多く、金銀が豊富に使ってあり、しかもそれを着て出る能役者は、歌舞伎俳優のようにお白粉を塗ってはいないのであるが、日本人特有の赧みがかっ た褐色の肌、或は黄色味をふくんだ象牙色の地顔があんなに魅力を発揮する時はないのであって、私はいつも能を見に行く度毎に感心する。

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昔 の女というものは、襟から上と袖口から先だけの存在であり、他は悉く闇に隠れていたものだと思う。当時にあっては、中流階級以上の女はめったに外出するこ ともなく、しても乗物の奥深く潜んで街頭に姿を曝さないようにしていたとすれば、大概はあの暗い家屋敷の一と間に垂れ籠めて、昼も夜も、たゞ闇の中に五体 を埋めつゝその顔だけで存在を示していたと云える。

……鉄漿などと云う化粧法が行われたのも、その目的を考えると、顔以外の空隙へ悉く闇を詰めてしまおう として、口腔へまで暗黒を啣ませたのではないであろうか。

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夜 光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失う如く、陰翳の作用を離れて美はないと思う。

つまりわれわれの祖先は、女と云うものを 蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)の器と同じく、闇とは切っても切れないものとして、出来るだけ全体を蔭へ沈めてしまうようにし、長い袂や長い裳裾で手足を 隈の中に包み、或る一箇所、首だけを際立たせるようにしたのである。

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わ れらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自(おのずか)ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。

これは簡単 な技巧のようであって、実は中々容易でない。たとえば床脇の窓の刳 り方、落懸(おとしがけ)の深さ、床框の高さなど、一つ一つに眼に見えぬ苦心が払われていることは推察するに難くないが、
分けても私は、書院の障子のしろ じろとしたほの明るさには、ついその前に立ち止まって時の移るのを忘れるのである。

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も しあの陰鬱な室内に漆器と云うものがなかったなら、蝋燭や燈明の醸し出す怪しい光りの夢の世界が、その灯のはためきが打っている夜の脈搏が、どんなに魅力 を減殺されることであろう。

まことにそれは、畳の上に幾すじもの小川が流れ、池水が湛えられている如く、一つの灯影を此処彼処に捉えて、細く、かそけく、 ちらちらと伝えながら、夜そのものに蒔絵をしたような綾を織り出す。


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ここまでついてきちゃいましたか..(笑)
ね?色っぽいでしょう?




文章
陰翳礼讃 谷崎 潤一郎



画像
Pierrot le fou (1965) Directed by Jean-Luc Godard
by inei-reisan | 2015-02-01 17:52 | 旧ブログ | Comments(0)

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by inei-reisan
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