布団の歴史

引越しが多ければ多いほど、人は寝床を変えることが多くて
私もそうやって寝る場所をよく変えた人の一人。
人生の半分は、睡眠に費やしているらしいから、そう考えると寝ている時間を一緒に過ごしている
布団は実は、気がつかないほどの私たちの理解者。


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どんな薄っぺらい、カビ臭い布団でも。
方や、ふっかふっかの高級布団であっても、私にとっては、一時的なおつきあいのことが多くて。
また住むところを変えれば、布団が変わり、ベットが変わり、
マットレスが変わってゆくのである。

私が人生で初めて布団を意識したのは、
4、5歳のとき、よく東京から田舎に泊まりにくるおばあちゃんが来客用の布団を敷かれているその脇に
私の分まで敷いてもらったときだった。
おばあちゃんはよく夏に泊まりに来ていて、夜になると蚊取り線香の匂いが部屋じゅうに
染み渡る。
そとは鈴虫がうるさいほど合唱していて、たまにしかこないおばあちゃんと一緒に寝たがった私は
とくふっかふかの敷き布団に潜り込んで、おばあちゃんと一緒によく眠った。

そのあと、思い出せるのは高校時代のベット。
一人用のベットは小さいけど、快適で。
でも勉強熱心な私はよく夕方の部活帰りに制服のまま布団に潜りこんで母親に怒られた。
制服のまま寝ていたのは、着替えるのがめんどくさいのと、またどうせ夜遅くまで勉強しなくちゃいけない
そんな理由もあったのだけど、
それにしてもよく怒られた。

それからは、大学時代の製図板の上のベット。
夜寝るのが惜しかった私は寝ることが恐怖になっていて、家に帰らずによく大学の製図板の上に寝て、
朝まで課題をこなす。
取り憑かれたように一人暮らしの家に帰らなくて、
家に帰っても家にあるベットは押し入れに片ずけて、製図板の下に突っ伏して寝てた。

それからは、ゲストハウスの生活が始まったのだけども、
布団は自分で持つものじゃなくて、一時的に借りるもの。
誰が使ったわからない布団をかぶって眠る生活。

そのころ巷では高級布団だの、低反発クッション枕だのと、いろいろ出てきたが、
ころころ住むところがかわる私には
ちっとも心に響かなかった。

それから国が変わることが多くなったから、布団は場所が変わるたびに手に入れるもの
というものになった。

それからも、布団の下で私はたくさん笑ったし、たくさん泣いてきた。
布団の中での電話での会話や、かつて潜りこんできた猫との会話や。
熱を出したことも、病気に苦しんだことも。

万が一、もし私が同じ場所にずっと住んでて、数年同じ布団をかぶって
人生の半分以上を過ごしてきたとしたら
どうだったんだろうと思う。

私の人生の布団の中に潜り込んで起きたたくさんのことを
いつまでも覚えているものがそばにあるんだとしたら
それはそれで、とってもよかったんじゃないか。

そんなことを思ってしまう。



そんな物質的な面から、私に起きた様々な出来事を思い出せることができる
心の余裕を、嬉しくも思う。

そして誰かと一緒に布団をシェアすることの喜びも
最近になって知ったのだ。










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# by inei-reisan | 2017-06-09 05:37 | オランダ生活 | Trackback | Comments(0)

自分が住む国を選ぶ権利はあるが、国が私たちを選ぶ権利はない
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